تسجيل الدخول「分かった。直美ちゃんはフリーの方がええんやな」
建物の陰に隠れ、5人が作戦を練り直していた。
「当然やん。こんなん、ペア組んだら足引っ張られるん目に見えてるもん。さっきの二人見て、よぉ分かったわ」
「ほんだら……俺は藤原、お前と組むわ」
「おぉ」
「ぼ、僕は?」
本田が泣きそうな顔で聞く。
「心配すんな、お前は坂口さんと組んだらええ」
「う、うん……分かった……」
「坂口さんは、それでいいですか」
「ああええよ、何とかなるやろ。それよりな、ひとつ問題があるんや」
「え……なんですか、問題って」
「聖水がなくなってしもたんや。最初に景気よぉ使いすぎた」
「は、はぁ……」
その時、本田のポケットから携帯が突然なった。
健太郎が頭を抱える。
「おえ本田、お前何考えとんねん。こんな所に携帯持ってきて、何に使う気やねん」
「うん。あのね、宏美ちゃんと連絡取り合うんに持っててん」
本田が携帯を手にする。
「アホやめとけ、罠や罠や」
「大丈夫やって。ほら、画面にも『宏美ちゃん』って出てるやろ」
健太郎が止める間もなく、本田が話し出した。
「はいもしもし、宏美ちゃん?」
しかし携帯の向こうから聞こえてきた声は、当然の如く宏美ちゃんではなかった。
低い男の声だった。
「……アホ」
「え……?」
そう漏らした声と共に、本田が白目を剥いて倒れた。
耳から灰褐色の脳味噌がどろりと流れ出し、そして4人の前で見る見る内に石化していった。
「そやから言うたやろが……」
健太郎が頭を抱えた。
坂口は好奇の目を本田に向けている。
「なるほどなるほど、これが石化の瞬間か」
直美がすっくと立ち上がった。
「私にまかせてもらうよ。次は銃や。銃がどんだけ効くんか試してみる」
「お、おえ直美ちゃん、こんな所で銃撃ったら周りの石像に聞こえてまうやんか。やめときって」
「気ぃ弱いなぁほんま。金玉ついてるんやろ、そん時はそん時や」
言うか言わないか、直美は本田の額に向けてSIGを構えた。
ボンボンボンッ!
3発の銃弾が顔面にヒットした。
顔にひびが入り、首から上がボロボロと崩れ落ちる。
「それから……ショットガンや。おい脂肪、ちょと貸し」
「お、おぉ……」
ズドンッ!
本田の腹に大きな穴が開いた。
しかしまだ、本田の体は動いている。
「やっぱし、とどめはいるか」
そう言うと直美は、蹴りの猛蹴をぶちかました。
「うおおおおおおおおおっ!」
最後に股間に一発蹴りを入れると、本田の体は粉々に砕け散った。
「やっぱ、銃もあんまし役に立たへんね。肉弾戦の方がてっとり早いわ」
そう言って再び額の汗を拭った。
坂口が粉々になった本田の残骸を前に、十字架を掲げてぶつぶつとつぶやく。
「君の事を我々は生涯忘れないだろう……すみやかに汝の魂が神の元へと辿り着く事を我らは祈る。汝の魂に永遠の安息がもたらされん事を。アーメン、ナンマイダ」
「本田……」
健太郎と藤原も、坂口に続いて手を合わせる。
「ほんで、山本君」
「はい」
「いやな、もう聖水がなくなってしもたからな、代わりにな」
「分かりました」
「しゃあないですね、ほんだら……」
ジョオオオオオオオオッ!
健太郎、藤原、坂口が本田の残骸に小便をかける。
「本田すまん、これで勘弁してくれ……往生してくれっ!」
「ダークジェノサイト、お前の事は忘れんからなっ!」
「アーメン」
その時であった。
健太郎が妙な気配を感じ、慌ててチャックを閉めた。
「坂口さん!」
「どないした」
「どないしたやおまへんて。今の銃声で石像らがこっちに気付きよったみたいです!」
「私は単独行動とらしてもらうよ」
「よっしゃ、ほんだら直美ちゃんはやつらをかく乱してくれ。好きなだけ暴れてや。俺らはかたまって行くから」
「そうさしてもらうよ。生まれて初めてやから楽しみなんよ、リミッター外すん」
「ほんだらな……」
健太郎が腕時計を見た。
「今は9時半……昼の13時に藤原のマンションに集合や。そんで涼子ちゃんらを助けて一気に脱出や。ええな、直美ちゃん」
「ええよ、こっからやったら約5キロやろ、十分やんか」
「僕は首に十字架さげてと……よし、行こか」
「はいなっ!」
石像たちが徘徊する中、4人が一斉に走り出した。
半年後。戦いは終わった。数百万の犠牲を払った大阪に、少しずつ活気が戻りつつあった。事件の真相は当然、誰にも分からない。全てを理解しているのは、藤原と涼子だけ。そして二人が、それを口外する事はなかった。* * *徘徊していた数百万にも及ぶ石像たちは皆、元の姿に戻っていた。しかし坂口の言っていた、「首謀者を倒せば、呪いが解けて皆が助かる」と言う言葉は、残酷な答えとなって返っていた。確かに元の姿に戻りはしたが、脳味噌を排出した人々が再び蘇生する事はない。市内は数百万人の死体の山、ゴーストタウンと化していた。学者たちは頭を悩ませ、連日この惨劇を巡っての議論が続いた。だが誰一人として、答えにたどり着くものはいなかった。藤原は思っていた。(呪いからは解き放たれた……魂っちゅうもんがあるんやったら、みんな、安らかな眠りについた筈や……そうや、絶対そうや……)* * *雲ひとつない透き通る青空を、ベンチに座って見つめている藤原と涼子。藤原が涼子の頭を優しく撫でた。「お兄ちゃん、屁たれにだけはなりたくないね」涼
爆発が起こった。衝撃で部屋が揺れる。「なるほど……健太郎さんにしては、なかなか格好いい最後だったようですね、ふはははははははっ!」「くっ……健っ……!」素早くマガジンチェンジを行い、藤原が雄介目掛けて発砲する。その藤原の体を、雄介の鋭い視線が容赦なく切り刻んでいく。* * *その時、爆発音に妖しい眠りから覚めた涼子の視界に、雄介と戦う藤原の姿が映った。「……お……お兄ちゃん……」涼子が体に巻かれたコードを外そうとあがく。幸いにもコードは緩く締められていて、何度か試みている内に外す事が出来た。―涼子の目に、床に転がる鉈が映った。涼子が鉈を手に取り、ゆっくりと立ち上がった。「ふはははははははっ! 藤原君、そろそろお別れの時ですね! 僕を裏切った事、あの世で後悔してください!」涼子が鉈を振りかざし、雄介の後ろに立った。藤原は壁にもたれかかり、諦めきった表情で両腕をだらんと下ろした。「よりによって、屁たれのクソダコに殺られるとはな……」「死ねっ!」その時だった。「やああああああああっ!」
雄介が拳を握り締め、わなわなと肩を震わせた。レースでよく見えないが、泣いている様に見えた。そしてしばらくすると天を仰ぎ、藤原への思いを断ち切る様に笑い出した。「あっはっはっはっ!」虚しい笑い声が、室内に響く。「分かりました……僕には……僕には友達なんかいなかったと言う事ですね……じゃあ僕は何ら遠慮する事なく、この力を持って世界の頂点に登ります……やはり頂点は一人なんですね……まずは健太郎さん、あなたです……あなたには最高の舞台を用意しましょう……直美さんっ!」「何……直美ちゃん、やと……」雄介の声にバスルームの扉が開き、中から直美がゆらりと姿を現した。「直美ちゃん……無事やったんかえっ!」「待て健」身を乗り出して叫ぶ健太郎を、藤原が制した。「よお見てみい、目が死んどる」「な、直美ちゃん……」「彼女はもう、僕の忠実な下僕です。彼女の能力は素晴らしい物です。石像にしてしまうには余りにも惜しい、そう思いましてね。彼女にはその姿のまま、僕の番犬になってもらったんです。さあ直美さん! まずは健太郎さんを殺して下さい!」その声に、直美の肩がピクリと動いた。&nbs
10分後。「ええ加減にさらさんかえこのボケッ!」健太郎が藤原の後頭部を張り倒した。「ごっ……!」衝撃で目から火を出した藤原が、思わずうなる。そして静かに、大きく深呼吸すると手を挙げ、二人に言った。「すまん、ちょっとタイムや……」ポケットから煙草を取り出し、くわえて火をつける。「ふううううぅっ……」白い息を吐き、眉間に皺を寄せ、天を仰ぐ。「……よし、もう大丈夫や……いわちゃき、いや、岩崎雄介やな、分かった……」煙草を床に捨て、踏み消した。「……そやけど、岩崎雄介……そんなやつ、俺知らんぞ。訳の分からん事ぬかしやがって……それも人の事、馴れ馴れしぃ呼びくさって」「正気に戻ったかえ。そやけどちょっと待てや、その話は後や。おえ屁たれ! 先に俺が質問するっ! お前がどないして、そんな訳の分からん能力を得たんか、まずはそっからや! さあ、答えたらんかえっ!」健太郎が雄介にショットガンを向けて吠えた。健太郎の問いに、思考が停止していた雄介もようやく我に帰った。「……い、いいでしょう&
銃を構えた藤原が、部屋に足を踏み入れたその時だった。「藤原、目えつむれっ! やっぱしやつはゴーゴンの力を持っとった! 顔見たら石にされてまうぞっ!」健太郎が大声で叫んだ。「……分かった」藤原が静かにうなずき目をつむり、安眠マスクをしようとした。その時だった。「藤原君! 心配しなくていいよ! 君に危害を加える様な事は絶対にしない! する訳ないじゃない! さあ、目を開けて!」雄介の狂喜する声が響いた。「何を! 騙されるかえっ!」「……大丈夫、僕は顔にレースをかけます。そうすれば石になる事はありません。健太郎さんも大丈夫ですよ、マスクを取ってください」藤原が恐る恐る、ゆっくりと目を開けた。すると雄介の言う通り、彼は顔に黒いレースをかけていた。頭にはシュルシュルと蛇が動いているのが見える。「おい健、大丈夫や。お前も目ぇ開けろ」藤原の声に、健太郎も安眠マスクをゆっくり外した。「……」藤原には、所狭しと張られている自分の写真、散乱しているコードや倒れている涼子の姿は見えなかった。彼の目に映ったもの。それはその場に転がっている、坂口の無残な生首だった。「坂口さんも……やられたんか……」「お
13階でドアが開いた。ショットガンを突き出しながら、健太郎が素早く左右に目を這わせた。坂口は十字架を天高く掲げ、健太郎に続く。その時、またあの声が聞こえてきた。「心配ありませんよ……ここに石像はいません……いるのは僕だけです……」「くっ……こんガキ、とことん挑発してけつかる……まあええ、行ったろやないかえっ!」健太郎が吠え、大股で藤原の部屋に向かった。声の主の言う通り、石像に遭遇する事無く、二人は藤原の部屋の前に立った。健太郎と坂口が顔を見合わせ、互いにうなずく。その時、玄関のドアが静かに開いた。「坂口さん、行きまっせ!」「分かった!」二人が同時に足を踏み入れる。「な……」健太郎が我が目を疑う。そこは既に、健太郎が知る藤原の家ではなくなっていた。バスルーム以外の壁が全てなくなっており、3LDKの部屋が大きな一室になっていた。そして至る所に、藤原の写真が所狭しと貼られていた。「な……なんじゃこの部屋は……藤原、藤原だらけやないか……あいつ、こないナルシストやったんかいな&hellip